(最終更新日 2026/07/25)
「スペインのオムレツ」で検索すると、思っているより奥の深い一皿にたどり着きます。
じゃがいもと卵で作る円盤状の厚焼き、玉ねぎを入れるか入れないかで家庭が二分する論争、地域ごとの半熟・厚焼きの流儀。名前は「トルティージャ」なのに、メキシコに行くとまったく別の食べ物を指すのはなぜか。
スペインのオムレツは、スペイン語でトルティージャ・エスパニョーラ(tortilla española)と呼ばれる、卵とじゃがいもを主材料にした厚焼きの卵料理です。
本記事に、トルティージャの由来・玉ねぎ論争・地域による違い・バルでの食べ方・基本の作り方・スペイン語での呼び名までを、文化背景から整理してまとめました。
本記事の根拠について
由来・材料・地域差・食べ方に関する記述は、スペイン王立アカデミー(RAE)の辞書、英語版および日本語版ウィキペディア、メキシコの料理辞典 Larousse Cocina、スペイン公式クロニスタ協会(Real Asociación Española de Cronistas Oficiales)の公開情報をもとにまとめています。発祥や起源には諸説があり、家庭ごとの分量や作り方にも幅があるため、本記事では単一の断定を避け、「〜という説がある」「家庭によって異なる」という形で紹介しています。
先に結論:トルティージャ・エスパニョーラとは(スペインのオムレツの正体)
この記事の結論
どんな料理? じゃがいもと卵で作る、円盤状の厚焼きオムレツ。スペインの国民食のひとつです。
基本材料は? 卵・じゃがいも・オリーブオイル・塩の4点。玉ねぎを加える家庭も多いですが、必須ではありません。
日本のオムレツとどう違う? 袋型に包まず両面をしっかり焼き、くさび形に切り分けて食べます。中はやや固めが本場流です。
スペインではいつ食べる? 家庭料理として食卓に並ぶほか、バルではpincho(ピンチョ)やバゲット挟みのbocadillo(ボカディージョ)として親しまれます。
①「じゃがいも入りの厚焼き」がスペインのオムレツ
スペインで単に「トルティージャ」と言えば、多くの場合このじゃがいも入り厚焼きオムレツ、正式にはtortilla española(トルティージャ・エスパニョーラ)やtortilla de patatas(トルティージャ・デ・パタタス)を指します。
スペイン王立アカデミー(RAE)の辞書は、卵を溶いてフライパンでオリーブオイルで焼いた料理をtortillaと定義し、じゃがいもを加えた場合はtortilla de patatasやtortilla españolaと呼ぶ、と説明しています。
②日本のオムレツとの3つの違い
日本でおなじみの洋食オムレツは、卵で具材を包み込む「袋型」でとろりと半熟に仕上げるのが定番です。トルティージャはそこが大きく違います。
形は円盤状の厚焼き、焼き方は両面焼き、そして中身はじゃがいもと卵が中心で、地元では半熟よりも中までしっかり火が通った固焼きが好まれます。日本語版ウィキペディアも、トルティージャは袋型にまとめず「フライパンの丸い形のまま焼き上げる」と説明しています。
③スペインでの位置付け(家庭料理+バルの定番)
トルティージャは、家庭の食卓にも、バル(居酒屋兼カフェ)のメニューにも並ぶ、スペインを代表する国民食のひとつです。家では夕食や軽食として登場し、街ではおつまみ用に一口サイズにしたpincho de tortilla(ピンチョ・デ・トルティージャ)や、バゲットに挟んだbocadillo de tortilla(ボカディージョ・デ・トルティージャ)として広く親しまれています。
スペインの名物料理の全体像を先につかみたい方は、以下の記事に代表的な料理をまとめました。
由来と歴史 — いつからスペインの国民食になったのか

トルティージャがスペインでいつ、どこで生まれたのか。実はひとつに定まった説はなく、いくつかの伝承と近年の研究が並んでいます。
1817年ナバラ文献・1835年ビルバオ包囲・18世紀バダホスの3説を、断定せずに並列で紹介します。
①記録上最古とされる1817年ナバラ文献
英語版ウィキペディアは、スペイン語の文献でtortillaが最初に登場するのは、1817年にナバラ地方の宮廷に宛てられた匿名の陳情書「memorial de ratonera」だと紹介しています。
The first reference to the tortilla in Spanish is found in a Navarrese document […] in 1817.
(訳:トルティージャに関するスペイン語で最古の記録は、1817年にナバラ宮廷に宛てられた文書に見られる。)
②1835年ビルバオ包囲・スマラカレギ将軍の伝承
広く語られてきたのは、1835年のビルバオ包囲戦で、カルロス派のTomás de Zumalacárregui(トマス・デ・スマラカレギ)将軍が兵士のために手軽で栄養のある料理として考案した、という伝承です。
スペイン公式クロニスタ協会(Real Asociación Española de Cronistas Oficiales)のコラムも、1833〜1840年のカルロス戦争の時期にスマラカレギ将軍がこの料理を工夫した、という言い伝えを紹介しています。
③18世紀バダホス(Villanueva de la Serena)説
近年、エストレマドゥーラ地方バダホス県のVillanueva de la Serena(ビジャヌエバ・デ・ラ・セレーナ)で見つかった18世紀の手書きノートに、じゃがいもと卵を使った料理の記述があるという研究も公表されています。
これが本当に現在のトルティージャの直接的な起源かは慎重な検討が必要ですが、19世紀より前の時点でスペインの家庭に近い形の料理があった可能性を示す資料として注目されています。
④主要3説の整理(どれも仮説であることに留意)
3つの説はどれも「これが正解」と決められる段階にはありません。共通しているのは、いずれもスペイン国内で、じゃがいもが庶民の食材として広まった時期に姿を現した、という点です。
じゃがいもは16世紀にアメリカ大陸から持ち込まれ、飢饉の食料として19世紀までにスペイン各地の家庭に定着しました。トルティージャは、この普及の流れのなかで各地の家庭で自然に生まれた家庭料理だと考えるのが自然です。
基本の材料と分量(家庭4人分の目安)

トルティージャの基本材料は、卵・じゃがいも・オリーブオイル・塩の4点です。玉ねぎを加える家庭も多くありますが、必須ではありません(この論争は次章で扱います)。
家庭4人分の目安を示します。比率は家庭ごとに幅がある点にご注意ください。
①卵・じゃがいも・オリーブオイル・塩の4点(+玉ねぎは家庭による)
スペインの家庭料理としてのトルティージャは、極端に材料が少ないのが特徴です。RAEの辞書も、卵をよく溶いてオリーブオイルで焼いた料理をtortillaと定義し、じゃがいもを加えたものをtortilla españolaやtortilla de patatasと呼ぶ、と説明しています。
メキシコの料理辞典Larousse Cocinaにも、じゃがいもを含む平たい卵料理でスペインを代表し、両面を焼いてケーキのようにくさび形に切り分けられる、と記されています。
②分量の目安(卵6個・じゃがいも500〜600g・玉ねぎ1/2個)
| 材料 | 4人分の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 卵 | 6個 | Lサイズ推奨。家庭により4〜8個の幅 |
| じゃがいも | 500〜600g(中2〜3個) | 男爵・メークインなど煮崩れしにくい品種が扱いやすい |
| 玉ねぎ | 1/2〜1個 | 入れない家庭も多数(次章参照) |
| オリーブオイル | 200〜300ml | じゃがいもを低温で煮るように加熱するため多めに使う |
| 塩 | 適量 | 卵液とじゃがいも両方に |
日本語版ウィキペディアは、具材をたっぷり入れて2cm程度の厚さに焼き、ケーキのようにくさび形に切り分けて盛りつけるのが一般的、と説明しています。
ここに示した比率はあくまで目安で、家庭ごと・地域ごとに卵とじゃがいもの割合、玉ねぎの量、油の使い方は大きく異なります。
③日本で買う材料の選び方(じゃがいもの品種等)
日本のスーパーで手に入りやすい男爵・メークインで問題なく作れます。ホクホク感を出したいなら男爵、しっとりまとまりを重視するならメークインが扱いやすい印象です。
オリーブオイルは、風味を大切にしたい場合はエキストラバージンオリーブオイルを、たっぷり使う調理用にはピュアオリーブオイルを、と使い分けている家庭も多くあります。
玉ねぎ論争 — con cebolla(コン・セボージャ)vs sin cebolla(シン・セボージャ)

スペインの家庭でトルティージャの話題になると、必ず出てくる論争があります。玉ねぎを入れる派か、入れない派か、です。
英語版ウィキペディアも「玉ねぎを入れるかどうかは論争的で、concebollistas(コンセボジスタス/入れる派)とsincebollistas(シンセボジスタス/入れない派)を分ける」と紹介しています。
①家庭を二分する定番論争
この論争は「どちらが正解か」を決めるものというより、家庭料理のスタイルをめぐる文化的な話題として楽しまれています。友人の家に招かれてトルティージャが出てきたときに「これは玉ねぎ入り?」「うちは入れない派」といった会話が生まれる、そんな日常のトピックです。
2018年にはガリシア地方のベタンソスで、市議会が伝統的なベタンソス版は玉ねぎ抜きが正統だと定める規定を出したという話題も、地元紙で取り上げられました。
②concebollistas 派の主張(甘み・しっとり感)
玉ねぎを入れる派の言い分は、じっくり炒めた玉ねぎの甘みと水分がじゃがいも・卵と合わさり、しっとりした食感と奥行きのある味わいになる、というものです。
スペインの著名なシェフや料理評論家にも玉ねぎ入り派を公言する人が多く、家庭でも「玉ねぎがないとトルティージャじゃない」と感じる層は少なくありません。
③sincebollistas 派の主張(じゃがいもと卵の純粋な味)
玉ねぎを入れない派は、じゃがいもと卵とオリーブオイルの3つだけで、素材の味をまっすぐに味わえるのが本来のトルティージャだ、と主張します。
先ほど触れたベタンソスの伝統的な半熟トルティージャや、家庭で「うちのおばあちゃんはずっと入れなかった」といった食習慣が、この派の背景にあります。
④スペイン紙 El Mundo 2021年調査(英語版 Wikipedia 経由):72.7% が玉ねぎ入り派
英語版ウィキペディアが紹介するスペイン紙 El Mundo の2021年のアンケート調査によれば、回答者の72.7%が玉ねぎ入りのトルティージャを好んだと報告されています。
この数値は英語版ウィキペディア経由の2段引用のため元記事本文までの直接確認ができていない点は割り引いてご覧いただきたいのですが、スペイン全体で見ると多数派は玉ねぎ入りに寄っている、という傾向を示す一つの目安になります。
The inclusion of onions is divisive, pitting concebollistas against sincebollistas. […] 72.7% of those surveyed preferred Spanish omelettes with onions.
(訳:玉ねぎを入れるかどうかは論争的で、「入れる派」と「入れない派」を分ける。[…] 調査対象者の72.7%が玉ねぎ入りを好んだ。)
⑤どちらを試すか
初めて家庭で作るのであれば、両方を一度ずつ試すのが分かりやすい方法です。同じレシピで玉ねぎ入りと玉ねぎ抜きの2枚を焼いて、自分の好みを見つけるのがよくある入り方です。
スペインの家庭を訪ねる機会があれば、遠慮なく「うちの家では入れる?入れない?」と聞いてみてください。会話が一気に盛り上がる定番の話題です。
地域による変種 — ベタンソス、アストゥリアス、ガリシアなど
トルティージャは家庭料理でありながら、地域ごとの「流儀」があります。
とくに焼き加減と副材料に、地方性がよく現れます。
①ガリシア・ベタンソス(Betanzos)版 — 中がとろりとした半熟
ガリシア地方の街ベタンソスは「半熟のトルティージャ」で知られる街です。英語版ウィキペディアも、ベタンソス風は玉ねぎを入れず、じゃがいもの下ごしらえを丁寧に行い、中がとろりとした状態で仕上げる、と紹介しています。
この半熟スタイルは近年スペイン全土のバルでも人気を集め、専門店を打ち出す店も増えています。
②アストゥリアス版 — 厚焼き
北部アストゥリアス地方では、しっかり厚みを持たせて中まで火を通す、いわゆる厚焼きスタイルが主流です。
ベタンソスの半熟とは対照的で、切り分けたときに崩れず、断面がきれいに立ち上がる仕上がりを好む家庭が多くあります。
③ガリシア地方のチョリソ入り変種
ガリシア地方では、ケネベック種などの地元のじゃがいもがトルティージャに向くとされ、地元産のチョリソを合わせた地域変種も見られる、と英語版ウィキペディアは記しています。
スパイスの効いたチョリソが加わると、素朴なじゃがいも卵とはまた違う、しっかりした味わいの一皿になります。
④スペイン各地域言語での呼び名
スペインには地域公用語がいくつも存在するため、料理の呼び方にも幅があります。カスティーリャ語(いわゆるスペイン語)ではtortilla españolaですが、地域によっては地元の言語の呼び方もあります。
スペインの他の家庭料理・郷土料理の全体像は、以下の記事にまとめました。パエリア・ハモン・タパスなどとあわせて眺めると、スペインの食卓像がつかめます。
バルでの食べ方 — pincho・tapa・bocadillo の違い

スペインのバル(居酒屋兼カフェ)に立ち寄ると、トルティージャは驚くほど多彩な形で並んでいます。
頼み方によってサイズも食べ方も変わるので、代表的な3形態を押さえておくと注文がぐっと楽になります。
①pincho de tortilla(つまむ一切れ)
pincho de tortilla(ピンチョ・デ・トルティージャ)は、トルティージャを一口〜数口サイズに切り分けた、つまむための一切れです。
英語版ウィキペディアも「常温または冷やして食べることもあり、一口サイズに切ってpincho de tortillaとしてタパスとして出されるのが一般的」と説明しています。カウンターに並んだ小皿からつまんで、飲み物と一緒に楽しむのが定番のスタイルです。
②tapa(皿盛りの小皿)
tapa(タパ)は、より一般的な「小皿料理」の総称で、トルティージャの小さめの切り分けを一皿にした形もこれに含まれます。
飲み物1杯にタパが付いてくる地域もあれば、有料の小皿として頼む地域もあり、扱いは街や店によって異なります。
③bocadillo de tortilla(バゲット挟み)
bocadillo de tortilla(ボカディージョ・デ・トルティージャ)は、バゲットにトルティージャを挟んだサンドイッチです。
日本語版ウィキペディアも「スパニッシュ・オムレツは、スペインで最も有名な料理の1つで、『ボカディージョ』と呼ばれるバゲットを使ったスペイン風サンドイッチに挟んで食べることもあります」と紹介しています。手軽にお腹を満たしたいときの定番で、街のパン屋やバルで気軽に手に入ります。
④頼み方の目安(スペイン語一言フレーズ)
一切れください
Un pincho de tortilla, por favor.
(トルティージャを一切れ、お願いします。)
サンドイッチで
Un bocadillo de tortilla, por favor.
(トルティージャのボカディージョをください。)
玉ねぎ入りかどうか聞く
¿La tortilla es con cebolla o sin cebolla?
(トルティージャは玉ねぎ入りですか、玉ねぎ抜きですか?)
スパニッシモは、グアテマラ人講師とマンツーマンでスペイン語を学べるオンラインスクールです。
体験レッスンの中で「あなたの国のトルティージャは玉ねぎ入り?」と聞いてみると、講師それぞれの家庭のスタイルが返ってきて、教科書には載らない食卓の話題で会話が広がります。
家庭での作り方 — 基本の5ステップ
家庭でトルティージャを作るときの流れを、5つのステップに整理しました。
難しい技術はほとんど必要ありませんが、最後の「裏返し」だけがつまずきやすいので、そこに紙面を割いて説明します。
①じゃがいもを切ってオリーブオイルで低温加熱(揚げ焼きではなく煮るように)
じゃがいもは皮をむいて薄切りにするか、5〜7mm程度の角切りにします。フライパンにたっぷりのオリーブオイルを入れ、低温でじっくり火を通します。
ここで大切なのが、色をつける「揚げ焼き」ではなく、油の中で柔らかく火を通す「煮る」感覚に近い加熱です。英語版ウィキペディアも「植物油、伝統的にはオリーブオイルで、味付けをしてゆっくり煮る(揚げるのではない)」と明記しています。
They are seasoned and gently simmered (not fried) in vegetable oil, traditionally olive oil, with sliced onions added at this stage, if used.
(訳:じゃがいもは味付けをして、植物油、伝統的にはオリーブオイルの中でゆっくり煮られる。玉ねぎを使う場合はこの段階で加える。)
②玉ねぎを炒める(con cebolla の場合)
玉ねぎ入りにする場合は、薄切りにした玉ねぎを、じゃがいもと同じフライパンで、透き通って甘みが出るまでゆっくり火を通します。
じゃがいもと一緒に加熱してもよく、その方が油と一緒に旨みが移り、卵と合わせたときにまとまりが出ます。
③卵に混ぜて休ませる
ボウルに卵を割り入れ、塩を加えてよく溶いておきます。加熱したじゃがいも(と玉ねぎ)を油を切ってから卵液に加え、全体をなじませます。
ここで10〜15分ほど休ませると、じゃがいもに卵液がしっかり馴染み、焼くときにまとまりやすくなります。
④フライパンで片面焼き
フライパンにオリーブオイルを少しなじませ、中火に温めます。卵液とじゃがいもを一気に流し入れ、フライ返しなどで縁を整えながら、底面がきつね色になるまで焼きます。
フライパンは、卵液の量に合った大きさ(4人分なら24〜26cm程度)を使うと、厚みが2cm前後に収まり切り分けやすい仕上がりになります。
⑤大皿を活用して裏返す(vuelta)
ここがトルティージャ最大の難関です。フライパンより一回り大きな平らな皿をフライパンの上にかぶせ、フライパンごとひっくり返して皿にトルティージャを移します。そのままフライパンに戻し入れ、もう片面をきつね色になるまで焼けば完成です。
この裏返しの手法はvuelta(ブエルタ)と呼ばれ、英語版ウィキペディアも「片面が焼けたら、しばしば大皿を混合物の上に置いてフライパンを裏返して反対側を焼く」と説明しています。
日本語版ウィキペディアも「厚手に焼くときには、大皿などを使って裏返し、両面をよく焼く」と、同じ手法を紹介しています。
スペイン語で「トルティージャ」の呼び名を整理する
「トルティージャ」という言葉は、実はスペインとメキシコで指す食べ物がまったく違います。
スペイン語学習者や、これから中南米に行く方は、ここを整理しておくと現地で戸惑わずにすみます。
①tortilla の発音とアクセント
tortillaは、日本語では「トルティージャ」「トルティーヤ」「トルティーリャ」といった表記が混在します。どれかが誤りというわけではなく、スペイン語のllの読み方が地域や話者で「ジャ」「ヤ」「リャ」などに分かれることを、そのままカタカナに写した違いです。
アクセントはtor-TI-llaと、真ん中のTIに置きます。スペイン語の発音とアクセントの基本ルールは以下の記事で詳しく解説しています。
②スペインとメキシコで意味が違う(RAE 辞書の定義差)
スペイン王立アカデミー(RAE)の辞書は、tortillaを地域によって別項で定義しています。スペインでは卵料理、メキシコや中米ではトウモロコシ粉や小麦粉で作る薄焼きの平パンを指します。
指す食べ物がまったく別なので、メキシコで「トルティージャください」と頼むとタコスの皮になる薄焼きが出てきますし、スペインで同じ言葉を使えば厚焼き卵料理が出てきます。混同を避けるため、スペインの卵料理は「española」(スペイン風)と付けてtortilla españolaと呼ぶようになった、と英語版ウィキペディアは説明しています。
En Bolivia, Costa Rica, El Salvador, Guatemala, Honduras, México, Nicaragua, Puerto Rico y República Dominicana: torta aplanada hecha con harina de maíz […].
(訳:ボリビア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、メキシコ、ニカラグア、プエルトリコ、ドミニカ共和国では、トウモロコシ粉で作られた平たい生地 […]。)
③con cebolla / sin cebolla / a la española のスペイン語表現
玉ねぎ入り
con cebolla
(〜入り/〜と一緒に)
玉ねぎ抜き
sin cebolla
(〜なし/〜抜きで)
スペイン風の
a la española
(スペイン風の/スペインのやり方で)
④バルで注文するときの一言フレーズ
先ほど紹介した注文フレーズの他に、料理そのものに関するスペイン語のボキャブラリを増やしたい方は、食べ物と料理名にまつわる語彙をまとめた以下の記事、レシピの読み方や料理表現をまとめた記事が便利です。
よくある質問
- 「スパニッシュオムレツ」と「トルティージャ」は同じ?
- 日本で「スパニッシュオムレツ」と呼ばれている料理は、スペイン語でトルティージャ・エスパニョーラ(tortilla española)や tortilla de patatas と呼ばれる卵料理と同じものを指しています。じゃがいもと卵を主材料にした円盤状の厚焼きオムレツで、玉ねぎを加える家庭も多く見られます。
- 玉ねぎを入れないのは邪道?
- どちらが正解ということはありません。玉ねぎを入れる「con cebolla」派と入れない「sin cebolla」派の論争はスペインで昔から続いており、地域や家庭によって流儀は分かれます。英語版ウィキペディアが紹介する El Mundo の2021年調査では、回答者の72.7%が玉ねぎ入りを好んだと報告されていますが、玉ねぎ抜きが伝統だとするベタンソスのような街もあります。
- 家庭で失敗しないコツは?
- 最大の関門は皿を使った「裏返し(vuelta)」の工程です。フライパンより一回り大きな平らな皿をかぶせ、フライパンごと裏返して皿にトルティージャを移し、そのままフライパンに戻して反対面を焼きます。また、じゃがいもは高温で色をつける揚げ焼きではなく、オリーブオイルで低温で煮るようにじっくり火を通すこと、卵液とじゃがいもを合わせた後に10〜15分休ませることも、まとまりのよい仕上がりにつながります。
- スペインではいつ食べるの?
- 家庭では夕食や軽食として食卓に並ぶことが多く、常温でも冷やしても食べられます。バルでは一日のさまざまな時間に、一口サイズの pincho de tortilla、皿盛りの tapa、バゲット挟みの bocadillo de tortilla として提供され、朝食から夜のおつまみまで幅広い場面で親しまれています。
まとめ:スペインのオムレツを、旅先で・家庭でもっと楽しむために
スペインのオムレツ「トルティージャ・エスパニョーラ」は、卵とじゃがいもを主材料にした円盤状の厚焼き卵料理で、スペインを代表する家庭料理のひとつです。
由来には1817年ナバラ文献・1835年ビルバオ包囲・18世紀バダホスなど複数の説があり、どれも仮説として並んでいます。
玉ねぎを入れるか入れないかはcon cebolla vs sin cebollaとしてスペイン国内で今も語られる定番の話題で、地方によっても半熟のベタンソス風、厚焼きのアストゥリアス風などのスタイルがあります。
バルではpincho・tapa・bocadilloの3形態で楽しめ、スペイン語で「玉ねぎ入りですか?」と一言添えられると、注文がぐっと楽になります。
本場のトルティージャの背景が分かったら、あとは「話してみる」だけです。
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ご注意
本記事のトルティージャに関する情報は、公開情報に基づく一般的な紹介です。発祥や起源には諸説があり、家庭ごとの分量・作り方・地域による流儀にも幅があります。最新の現地事情や特定のお店の情報は、現地の観光情報や公式サイトでご確認ください。
参考文献
参照日:2026-07-16





