スペイン語の契約書でよく使う表現まとめ|条文テンプレ&NG直訳例

(最終更新日 2025/11/14)

スペイン語圏とのビジネスで契約書を目にして、「どこから読めばいいのか分からない」と困った経験はありませんか?

本記事では、スペイン語の契約書でよく使われる表現の解説に加えて、実務で使える条文のテンプレートと、避けたいNG直訳パターンも紹介します。

法律の専門知識がなくても、契約書の大枠を把握できるようになることを目指します。

本記事を読むと、次のことができるようになることを目指します:

・スペイン語の契約書の「どこに何が書いてあるか」をざっくり把握できる

・よく出てくる定番フレーズと、基本的な条文テンプレ(日西対訳)のイメージがつかめる

・日本語からスペイン語に訳すときのNG直訳パターンをいくつか避けられる

・手元の契約書をざっくりチェックするための観点が分かる

なお、本記事で紹介する例文はネイティブチェックの監修を受けておりますが、あくまでも学習用の例文です。
実際の契約書に利用する場合は、必ず専門家のチェックを受けてください。

1. スペイン語契約書の基本構造と契約当事者を明確にする言葉

契約書を開いて最初に戸惑うのは「どこから読めばいいのか」という点です。

実は、スペイン語の契約書にも決まった型があり、それを知っているだけで内容の把握がぐっと楽になります。
まずは全体の構造と、頻出するキーワードから見ていきましょう。

契約書の典型的な構成要素

典型的な構成:

  • Encabezado(前文):契約当事者の情報
  • Declaraciones(宣言事項):前提となる事実や状況
  • Cláusulas(条項):契約の本体部分
  • Firmas(署名):当事者の署名欄

契約当事者を表す表現

契約書では、誰と誰の間の契約なのかを明確にすることが重要です。

スペイン語日本語使用場面
Las partes両当事者契約全体を通じて
El contratante契約者一般的な呼び方
El proveedor供給者・サービス提供者売買・サービス契約
El cliente顧客・クライアント売買・サービス契約

ポイント
「en adelante “La Empresa”」(以下「会社」という)のような表現もよく見かけます。
これは日本の契約書の「甲」「乙」に相当するイメージを持っておくと、条文を読むときに楽になります。

2. スペイン語契約書の定番フレーズ10選

契約書には「お決まりの表現」が繰り返し登場します。
これらの定番フレーズは、日常会話とは違う独特な言い回しですが、一度覚えてしまえば、どの契約書でも応用が効きます。ここでは特に重要な10個のフレーズと、よく使われる動詞を押さえておきましょう。

必須フレーズ一覧

de conformidad con – ~に従って、~に基づいて

sin perjuicio de – ~を害することなく、~にかかわらず

en virtud de – ~により、~に基づいて

salvo pacto en contrario – 別段の合意がない限り

de buena fe – 誠実に、善意で

con carácter previo – 事前に、あらかじめ

en el plazo de – ~以内に(期間を示す)

por escrito – 書面により

a título oneroso – 有償で

de mutuo acuerdo – 双方の合意により

これらのフレーズは、契約書のあらゆる箇所で使用されます。
特に「de conformidad con」や「en virtud de」は、法的根拠を示す際によく登場するので、見つけたら注意深く読むようにしましょう。

契約書で頻出する動詞と活用

契約書でよく使われる動詞も押さえておくと安心です。

  • acordar(合意する):Las partes acuerdan…(両当事者は~に合意する)
  • obligarse(義務を負う):El proveedor se obliga a…(供給者は~する義務を負う)
  • comprometerse(約束する):La empresa se compromete a…(会社は~することを約束する)

3. 条文タイプ別のテンプレート表現(6タイプ)

実際の契約書では、内容によって条文の書き方にパターンがあります。
ここでは、どの契約書にも登場する代表的な6タイプの条文について、そのまま参考にできるテンプレートと日本語訳を紹介します。これらを手元に置いておくと、条文の構造が理解しやすくなります。

期間・期限に関する条文

この文言はサービス契約や販売代理店契約でよく使われます。

テンプレート例:

El presente contrato tendrá una duración de [número] años,
contados a partir de la fecha de su firma, pudiendo ser
prorrogado de mutuo acuerdo entre las partes.



(本契約は、署名日から起算して[数字]年間の期間を有し、両当事者の合意により延長することができる。)

義務・責任に関する条文

この文言は売買契約や製造委託契約で頻出します。

テンプレート例:

El proveedor se obliga a entregar los productos objeto
del presente contrato en el plazo máximo de [número] días
hábiles, contados a partir de la recepción del pedido.


(供給者は、注文受領から起算して最大[数字]営業日以内に、本契約の対象製品を納入する義務を負う。)

支払い条件の条文

あらゆる有償契約で必須の条項です。

テンプレート例:

El cliente deberá abonar el importe total de la factura
mediante transferencia bancaria, en un plazo no superior
a 30 días naturales desde la fecha de emisión de la misma.


(顧客は、請求書発行日から30暦日以内に、銀行振込により請求書の全額を支払わなければならない。)

秘密保持条項(Confidencialidad)

業務委託契約やコンサルティング契約で重要な条項です。

テンプレート例:

Las partes se comprometen a mantener la confidencialidad
de toda información intercambiada durante la vigencia del
contrato y por un período de [número] años posteriores
a su terminación.


(両当事者は、契約期間中および契約終了後[数字]年間、交換されたすべての情報の秘密を保持することを約束する。)

責任制限条項(Limitación de responsabilidad)

サービス契約やソフトウェアライセンス契約でよく見られます。

テンプレート例:

En ningún caso la responsabilidad del proveedor excederá
del importe total abonado por el cliente en virtud del
presente contrato. Se excluyen expresamente los daños
indirectos y el lucro cesante.


(いかなる場合も、供給者の責任は、本契約に基づいて顧客が支払った総額を超えないものとする。間接損害および逸失利益は明示的に除外される。)

準拠法・裁判管轄条項(Ley aplicable y jurisdicción)

国際契約では必須の条項です。
言語条項として「En caso de discrepancia, prevalecerá la versión en español」(相違がある場合は、スペイン語版が優先する)を追加することもあります。

テンプレート例:

El presente contrato se regirá por las leyes de [país].
Para cualquier controversia derivada del mismo, las partes
se someten a la jurisdicción de los tribunales de [ciudad].


(本契約は[国]の法律に準拠する。本契約から生じるいかなる紛争についても、両当事者は[都市]の裁判所の管轄に服する。)

4. 日本語からスペイン語に訳すときのNG直訳パターンと安全な言い換え

日本語とスペイン語では、契約書の表現方法に違いがあります。
直訳すると意味が変わってしまったり、曖昧になってしまう表現があるので注意が必要です。
ここでは、特に間違えやすい4つのパターンと、その正しい理解の仕方を解説します。

義務表現のNG直訳(〜する/〜できる)

NG例(ES): La parte A hará X.
NG例(JA直訳): 当事者AはXをするだろう。

OK例(ES): La parte A se obliga a realizar X.
OK例(JA): 当事者AはXを実施する義務を負う。

単純未来形で「〜する」とだけ書くと、義務なのか予定なのかが曖昧になります。契約書では「se obliga a」や「deberá」を使って、義務であることを明確にすることが重要です。曖昧な表現は、後々の紛争の原因となるリスクがあります。

時間・期限のあいまいな表現

NG例(ES): Lo antes posible
NG例(JA直訳): できるだけ早く

OK例(ES): En un plazo máximo de [número] días hábiles
OK例(JA): 最大[数字]営業日以内に

「できるだけ早く」や「速やかに」といった表現は、解釈の余地が大きすぎます。
具体的な日数や期限を明記することで、両当事者の認識のずれを防げます。

「sin perjuicio de」の誤解

NG解釈: sin perjuicio de を「〜を害してはならない」と解釈する

OK例(ES): sin perjuicio de los derechos del cliente
OK例(JA): 顧客の権利にかかわらず/顧客の権利を妨げることなく

この表現は「〜があっても関係なく」「〜を妨げることなく」という意味で、禁止ではなく「両立」を示す表現です。誤解すると、条文の意味が180度変わってしまうリスクがあります。

受動態と能動態の使い分け

NG例(ES): Será considerado como…
NG例(JA直訳): ~と見なされるだろう

OK例(ES): Se considerará como…
OK例(JA): ~とみなす

日本語の契約書では能動的な表現を好む傾向があります。
スペイン語の受動態をそのまま訳すと、責任の所在が不明確になる場合があるため、文脈に応じた調整が必要です。

5. 契約書を読む際のチェックリスト

契約書を前にして「全部読むのは大変」と感じたら、まずは重要ポイントだけでも確認しましょう。
ここでは、最低限チェックすべき10項目と、専門家に相談した方がよいケースを整理しました。
このリストを使えば、契約書の重要部分を見落とすリスクを減らせます。

最低限確認すべき10項目

スペイン語の契約書を前にしたら、まず以下の項目をチェックしましょう。

契約当事者(Las partes)は誰と誰か
契約の目的(Objeto del contrato)は何か
契約期間(Duración/Vigencia)はいつからいつまでか
支払い条件(Condiciones de pago)の金額と期限
納期・履行期限(Plazo de entrega/ejecución)
解除条件(Causas de rescisión/terminación)
秘密保持条項(Cláusula de confidencialidad)の有無
責任制限(Limitación de responsabilidad)の内容
準拠法(Ley aplicable)はどこの国の法律か
裁判管轄(Jurisdicción)はどこか

専門家に相談すべきケース

ここまで自分で確認できても、次のような場合には専門家に相談した方がよいでしょう。

契約金額が大きい(自社の年間売上の10%を超えるなど)

責任や損害賠償の範囲が広く書かれている

「irrevocable」「renuncia a」「sin límite」「solidariamente」など強い拘束力を持つ語が多い

自社に有利な条項がほとんど見当たらない

危険信号となる表現

以下の表現を見つけたら、特に注意深く確認することをおすすめします。

  • 「irrevocable」(取消不能)
  • 「renuncia a」(~を放棄する)
  • 「sin límite」(無制限)
  • 「solidariamente」(連帯して)

これらの表現は、大きな責任や制約を伴う可能性があるため、必ず専門家に確認してもらうことをおすすめします。

6. 契約書まわりのメール・交渉フレーズ

契約書は単独で存在するものではなく、メールでのやり取りや口頭での交渉と組み合わさって進んでいきます。ここでは、契約書に関連したコミュニケーションで使える実践的なフレーズを紹介します。これらの表現を知っていると、契約プロセス全体がスムーズに進められます。

契約書に関連するメール表現

契約書のやり取りでは、メールでのコミュニケーションも重要です。

よく使うフレーズ:

  • 「Adjunto el borrador del contrato」(契約書の草案を添付します)
  • 「Favor de revisar las cláusulas marcadas」(マークした条項をご確認ください)
  • 「Quedamos a la espera de sus comentarios」(コメントをお待ちしております)

交渉時に使える表現

契約条件の交渉では、以下のような表現が役立ちます。

  • 「Proponemos modificar la cláusula…」(~条項の修正を提案します)
  • 「Sería posible considerar…」(~を検討していただくことは可能でしょうか)
  • 「Necesitamos aclarar el punto sobre…」(~の点について明確にする必要があります)

まとめ:スペイン語の契約書を読み解くための基本表現とテンプレート

今回は、スペイン語の契約書でよく使われる表現、条文テンプレート、そして避けるべきNG直訳パターンを紹介しました。

スペイン語圏とのビジネスでは、契約書の内容をある程度理解できることが、安心感と交渉力につながります。完璧に理解する必要はありませんが、重要なポイントを押さえることで、リスクを回避し、より良い条件での取引が可能になります。

ぜひ、この記事の条文テンプレートと定番フレーズを手元に置いて、契約書チェックにお役立てください。

契約書の条文を読んでみたけど、「この表現の正確な意味が分からない」「交渉でどう伝えればいいか」と悩まれたら、スパニッシモのビジネススペイン語コーチングコースをご活用ください。

契約書に出てくる表現の解説はもちろん、交渉メールの書き方や、相手からの修正要求への返信フレーズなども講師と実践的に学んでいただけます。法的アドバイスはできませんが、言語面でのサポートを通じて、より自信を持って契約交渉に臨めるようになります。

初回レッスンの受講に不安がありましたら、日本人スタッフとの学習相談も可能です。

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スペイン語を話せるようになるには、インプットだけでなく、アウトプットとして、学んだことをどんどん練習することが大切です。

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参考文献・参考資料

スペイン語契約書の背景にある法的な考え方をより深く理解したい場合は、次の一次資料も参考になります。

詳しくはこれらの一次資料をご確認ください。


注意事項: 本記事は語学学習を目的としており、法律アドバイスではありません。実際の契約締結や契約書の作成・翻訳については、必ず弁護士や専門の翻訳会社にご相談ください。
記事内の例文はすべて学習用のサンプルであり、そのまま使用することを保証するものではありません。

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