(最終更新日 2026/03/31)
この記事では、メキシコへの進出・駐在を検討中もしくはすでに現地で活動されている方に向けて、2026年の最低賃金の最新額から、決定の仕組み、8年間の推移、日系企業への影響までを整理して解説します。
「いくらなのか」だけでなく「なぜ毎年上がるのか」「いつ・誰が決めるのか」まで把握しておくことで、今後の人件費計画にも役立てていただけます。
本記事の根拠について
本記事の数値は、メキシコ最低賃金委員会(CONASAMI)の公式プレスリリースおよびJETRO(日本貿易振興機構)のビジネス短信に基づいています。
為替レートはJETRO記事内の1ペソ=約8.5円(2025年12月時点)を基準としており、変動により円換算額は変わります。
先に結論:メキシコの最低賃金はいくら?
①2026年の最低賃金 — 日給315.04ペソ(約2,700円)
2026年1月1日から、メキシコの一般地域における最低賃金は日給315.04ペソに引き上げられました。
前年(2025年)の278.80ペソから13%の上昇で、月額に換算すると約9,582ペソ(約81,000円)になります。
②北部国境地帯は日給440.87ペソ(別体系)
米国との国境沿いに位置する北部国境地帯(ZLFN)では、一般地域とは別に最低賃金が定められています。
2026年は日給440.87ペソで、前年の419.88ペソから5%の上昇です。
ポイント:2021年〜2025年は一般地域と北部国境地帯の引上げ率が同率でしたが、2026年は一般地域13%に対し北部国境地帯5%と、初めて大きく異なる率になりました。
| 地域 | 2025年 日給 | 2026年 日給 | 上昇率 | 月額概算 | 円換算概算 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般地域 | 278.80ペソ | 315.04ペソ | 13% | 約9,582ペソ | 約81,000円 |
| 北部国境地帯(ZLFN) | 419.88ペソ | 440.87ペソ | 5% | 約13,407ペソ | 約114,000円 |
出典:CONASAMI公式プレスリリース(2026年)。月額=日給×30.42日(365÷12)。円換算=1ペソ≒8.5円(JETRO 2025年12月記事基準)
最低賃金の決まり方 — CONASAMIと引上げの仕組み
①CONASAMI(最低賃金委員会)とは — 政労使三者構成
メキシコの最低賃金は、CONASAMI(Comisión Nacional de los Salarios Mínimos:最低賃金委員会)が毎年決定しています。
CONASAMIは政府・経営者団体・労働組合の三者で構成されており、毎年12月に翌年1月からの最低賃金引上げ率を発表します。
2026年の引上げは全会一致で合意に達したとシェインバウム大統領が強調しており、雇用主側代表のメキシコ経営者連合会(COPARMEX)も賛成の意を表しています。
②引上げ率の計算ロジック(MIR+インフレ考慮分)
最低賃金の引上げ率は、次の2つの要素で構成されています。
- MIR(Monto Independiente de Recuperación:購買力回復分) — 固定金額(ペソ建て)で、購買力の回復を目的とした上乗せ分です。2017年の最低賃金改定で初めて導入されました
- インフレ考慮分 — 物価上昇を反映したパーセンテージでの引上げです
2026年一般地域の計算例:
前年日給278.80ペソ + MIR 17.01ペソ + インフレ考慮分6.5%(約19.23ペソ)= 315.04ペソ(引上げ率13%)
MIRはあくまで最低賃金の購買力回復が唯一の目的であり、契約賃金や公務員賃金など他の賃金の基準として使用してはならないとCONASAMIは明記しています。
③一般最低賃金と業種別最低賃金の違い
メキシコの最低賃金には、本記事で解説している一般最低賃金のほかに、業種別最低賃金(salarios mínimos profesionales)があります。
業種別最低賃金は61の職種・業務に個別の日給が設定されており、2026年はそれぞれの地域の一般最低賃金と同率で引き上げられています。
業種別最低賃金の詳細な一覧は、CONASAMIの公式サイトで確認できます。
2018年〜2026年の推移 — 8年連続2ケタ上昇の全貌
①年別の最低賃金と上昇率(2018年〜2026年)
2018年に日給88.36ペソだった一般最低賃金は、2026年に315.04ペソへと約3.56倍に上昇しました。
8年連続で10%を超える引上げ率が続いています。
| 年 | 一般地域 日給 | 前年比 | 北部国境地帯 日給 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2018 | 88.36ペソ | — | —(統一制) | — |
| 2019 | 102.68ペソ | 16% | 176.72ペソ | 新設(2倍) |
| 2020 | 123.22ペソ | 20% | 185.56ペソ | 5% |
| 2021 | 141.70ペソ | 15% | 213.39ペソ | 15% |
| 2022 | 172.87ペソ | 22% | 260.34ペソ | 22% |
| 2023 | 207.44ペソ | 20% | 312.41ペソ | 20% |
| 2024 | 248.93ペソ | 20% | 374.89ペソ | 20% |
| 2025 | 278.80ペソ | 12% | 419.88ペソ | 12% |
| 2026 | 315.04ペソ | 13% | 440.87ペソ | 5% |
出典:CONASAMI公式プレスリリース、JETRO ビジネス短信(各年度)、JILPT
北部国境地帯(ZLFN)は2019年にロペス・オブラドール前大統領の国境経済振興策により新設され、一般地域の約2倍の水準でスタートしました。
2020年は前年の大幅引上げの反動で5%に抑制されましたが、2021年〜2025年は一般地域と同率で推移しています。
②なぜ上がり続けるのか — 政策的背景(購買力回復目標)
メキシコ憲法第123条は、最低賃金を「一家の長が日常の必要性を満たし、子女の義務的教育を与えるのに十分であるべきもの」と定めています。
しかし長年にわたりインフレ率程度の微増が続いた結果、この理念とかけ離れた水準にまで低下していました。
2018年以降の大幅引上げは、この乖離を解消し最低賃金の購買力を回復させることが最大の目的です。
経営者団体のCOPARMEXもこの方針を支持しており、政労使の合意のもとで引上げが続けられています。
③2030年目標 — 基礎物資2.5人分カバー
COPARMEXによると、2026年の引上げにより一般最低賃金は基礎物資(Canasta Básica)を2人分賄える水準の100%に到達しました。
シェインバウム大統領は2030年までに基礎物資2.5人分をカバーできる水準への引上げを公約として掲げており、COPARMEXもこの目標を支持しています。
今後も毎年の引上げが続く見通しですが、引上げ率は「労働市場やインフレ、経済成長を継続的に観察し、毎年の妥当性を評価する」とされています。
| 年 | 基礎物資カバー率 |
|---|---|
| 2023 | 1.5人分 |
| 2024 | 2人分の86% |
| 2025 | 2人分の91% |
| 2026 | 2人分の100%(達成) |
| 2030(目標) | 2.5人分 |
出典:COPARMEX プレスリリース(JETRO各年記事経由)
日系企業への影響と対応策
①工員賃金との逆転現象 — 最低賃金≒一般工員賃金
8年間で約3.56倍に上昇した最低賃金により、最低賃金と一般工員賃金の差はほとんど見られなくなりました。
特に北部国境地帯では、2022年時点ですでに一般工員の賃金が最低賃金と同じか、わずかに上回る水準の企業が多い状態でした。
一般地域でもこの傾向は広がっており、企業はインフレ率程度の賃金改定では最低賃金を下回ってしまうため、労使交渉にかかわらず大幅な人件費上昇が避けられない状況です。
②コスト圧迫への対応
JETROの取材に対し、現地日系企業からは次のような声が報告されています。
賃上げは最低賃金に連動せざるを得ず、インフレ率よりも高く賃金を引き上げる必要がある
東南アジアと比較すると工員賃金が高い。賃金上昇率を売価に転嫁することが難しく、利益率を圧迫している
工場の自動化や代替地の模索を考えざるを得ず、雇用が守れなくなる恐れがある
対応策として、工場の自動化による生産性向上、製品価格への転嫁、メキシコ以外の拠点の検討といった取り組みが進められています。
③2027年以降の見通し
政府は2030年までに基礎物資2.5人分をカバーする水準への引上げを目標としており、今後も毎年の引上げが続く見通しです。
ただし、引上げ率は毎年CONASAMIで労働市場やインフレの状況を踏まえて決定されるため、具体的な率は年末まで確定しません。
注意:2027年以降の引上げ率は未確定です。
人件費計画を立てる際は、過去の推移(12〜22%)を参考にしつつ、毎年12月のCONASAMI発表を確認してください。
日本・他国との比較
①日本の最低賃金との比較(時給換算ベース)
日本の最低賃金は時給ベースで設定されていますが、メキシコは日給ベースです。
比較のために時給換算すると、メキシコの一般地域は時給約39.4ペソ(約335円)となります(日給315.04ペソ÷8時間)。
日本の全国加重平均1,055円(2024年度)と比べると、日本円ベースでは日本の約3分の1の水準です。
ただし、メキシコの物価水準を考慮すると、購買力平価ベースでの差は縮小します。
②中南米主要国との比較
| 国 | 最低賃金(月額概算) | 円換算概算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| メキシコ(一般地域) | 約9,582ペソ | 約81,000円 | 2026年。1ペソ≒8.5円 |
| メキシコ(北部国境地帯) | 約13,407ペソ | 約114,000円 | 2026年。1ペソ≒8.5円 |
| 日本(全国加重平均) | — | 時給1,055円 | 2024年度 |
為替レートは変動が大きいため、上記の円換算は目安としてご覧ください
メキシコの平均年収や日本人の現地採用相場については、メキシコの年収・給料事情【2026年最新版】で詳しく整理しています。
最新情報の確認方法と公式情報源
メキシコの最低賃金は毎年12月に翌年分が発表されます。
最新の金額を確認する際は、以下の情報源を優先順位の高い順にご利用ください。
- CONASAMI公式サイト(スペイン語) — 最も正確で最新の一次情報。引上げ率・MIR内訳・業種別一覧が掲載されます
- JETRO ビジネス短信(日本語) — CONASAMI発表後数日以内に日本語で速報が出ます。日系企業への影響分析も含まれます
- DOF(連邦官報)(スペイン語) — 法的に確定した最低賃金額が公示されます。法的根拠として最も正式な文書です
情報源によって内容が食い違う場合は、①CONASAMI公式 → ②DOF官報 → ③JETRO の順で確認することをおすすめします。
よくある質問
- メキシコの最低賃金は日本と比べて高い?低い?
- 日給ベースで日本円に換算すると、メキシコの方が低い水準です(時給換算で約335円 vs 日本の1,055円)。ただし、メキシコの物価水準を考慮すると購買力ベースでの差は縮小します。また、8年で約3.56倍に急上昇しており、上昇ペースは日本を大きく上回っています。
- なぜ毎年10%以上も上がっているのか?
- 最大の理由は、CONASAMI(最低賃金委員会)が導入したMIR(購買力回復分)という仕組みです。長年の低水準を是正し、憲法が定める「一家の基礎物資を賄える水準」に回復させることが目的で、2030年までに基礎物資2.5人分をカバーする計画です。
- 北部国境地帯の最低賃金が別なのはなぜ?
- 米国との国境沿いは生活コストが高く、米国への労働力流出を防ぐ目的で2019年に別体系が設けられました。当初は一般地域の約2倍でスタートし、現在も約1.4倍の水準です。2026年は一般地域13%に対し5%と引上げ率が抑えられました。
- 最低賃金が上がると日系企業にどう影響する?
- 最低賃金と一般工員賃金の差がほぼなくなっており、企業は最低賃金に連動した賃上げを余儀なくされています。売価への転嫁が難しい場合、利益率の圧迫につながります。工場の自動化や代替地の検討を進める企業もあります。
- 2027年以降も上がり続ける?
- 政府は2030年までに基礎物資2.5人分をカバーする目標を掲げており、上昇傾向は継続する見通しです。ただし、具体的な引上げ率は毎年CONASAMIが経済状況を踏まえて決定するため、年末の発表を待つ必要があります。
まとめ:メキシコの最低賃金は「いくら」だけでなく「なぜ」が重要
2026年のメキシコの最低賃金は、一般地域で日給315.04ペソ(月額約9,582ペソ)、北部国境地帯で日給440.87ペソに引き上げられました。
2018年の88.36ペソから約3.56倍という急上昇の背景には、CONASAMIのMIR(購買力回復分)メカニズムと、2030年に基礎物資2.5人分カバーを目指す政策目標があります。
日系企業にとっては、最低賃金と工員賃金の差がほぼなくなり、毎年の賃上げが不可避な状況です。
単に「今年はいくらか」を知るだけでなく、引上げの仕組みと政策の方向性を理解しておくことが、中長期の人件費計画や経営判断に直結します。
現地スタッフとの給与交渉や就業規則の確認、労働局(STPS)への問い合わせなど、賃金に関するやり取りはスペイン語で行う場面が少なくありません。
渡航前・駐在中にビジネススペイン語の基礎を身につけておくと、こうした場面でスムーズに対応できます。
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ご注意
本記事の法令・制度に関する記述は公開情報に基づく一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。
最新の制度や手続きについては、CONASAMI、JETRO、または現地の専門家に直接ご確認ください。
参考文献
参照日:2026-03-10
- CONASAMI — Incremento a los Salarios Mínimos para 2026
- CONASAMI — Incremento a los Salarios Mínimos para 2025
- JETRO — 2026年のメキシコにおける最低賃金は13%上昇
- JETRO — 2025年の最低賃金引き上げ率は12%に
- JETRO — 2024年の最低賃金を20%引き上げ
- JETRO — 2023年の最低賃金を20%引き上げ
- JETRO — 2022年の最低賃金は前年比22%上昇
- JILPT — 2019年最低賃金を発表(メキシコ)
- スパニッシモ — オンラインスペイン語スクール



